懐疑論の分類と回答

 

 

 

温暖化についての知識や理解を図に表すと、こんな感じになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温暖化についての懐疑論は、この図のどこかを疑っているのだといえます。たとえば、「世界の気温はすでに上がりはじめている」という事実を疑う人は、「地球はでかい。気候観測所のない原野や大海原の気温は上がってると断言できないのでは?」と言ったりします。その疑問への回答の一例は、「今は人工衛星で全地球のリアルタイムの気温が推定できますよ」というかんじです。するとさらに、「人工衛星を打ち上げる前の気温はどうやって測ったの?100年前の温度計は精度が悪いから信頼できないのでは?」という疑問が来たりします。このように、すべての疑問に答えるのはきりのない話ですが、おおまかなさわりだけでも掲載していきたいと思います。

 

 

「温室効果」グループ

 

そもそも温室効果なんて存在しない

温室効果っていう作用はあるけど、二酸化炭素は温室効果を持たない

二酸化炭素に温室効果はあるけど、今の濃度では飽和している

水蒸気の温室効果のほうが大きすぎて、二酸化炭素は取るに足らない ――>こちらをどうぞ

 

「炭素循環」グループ

 

そもそも、二酸化炭素は増えてない ――>こちらをどうぞ

二酸化炭素が増えてることは認めるが、人間のせいじゃない ――>こちらをどうぞ

二酸化炭素が増えてるのは、太陽活動のせいで水温が上がり海から出てきたからだ ――>こちらをどうぞ

自然の炭素循環とくらべたら人間の出す二酸化炭素の量はすごく少ないので気候に影響を与えない ――>こちらをどうぞ

自然の炭素循環とくらべたら人間の出す二酸化炭素の量はすごく少ないのでどこかに吸収される

京都議定書が完全達成されても温暖化のペースを数年遅らせる程度の効果しかない ――>こちらをどうぞ

 

「悟り」グループ

 

長い目で見たら氷河期が来るので温暖化を心配しないでいい ――>こちらをどうぞ

長い目で見たら数度の温度変化はふつうなので気にしないでいい

長い目で見たら数メートルの海面の上下はふつうなので気にしないでいい

人類も自然の一部なので、その行動を受け入れるべき

百年後の人類がどうなろうと知ったことじゃない

 

「無知ゆえに批判」グループ 断片的な科学知識で専門家の研究を批判する

 

二酸化炭素だけのせいにするのは間違ってる ――>こちらをどうぞ

メタンも大事だよ。メタンを考えてない温暖化研究は間違ってる

火山活動も大事。火山活動を考えてない温暖化研究は間違ってる

太陽活動も大事。太陽活動を考えてない温暖化研究は間違ってる

地球の天体運動も大事。天体運動を考えてない温暖化研究は間違ってる

気候予測のモデルは公開されてないので信用できない

科学者はこの前まで氷河期の到来を恐れてたくせに、こんどは温暖化なんて節操がない

百年後の予測なんて当たるわけがない

 

「フィードバック」グループ 二酸化炭素の温室効果は認めるけど、それを打ち消す効果もある

 

気温が上がると植物がより大きくなるから、二酸化炭素を吸ってくれて一件落着 ――>こちらをどうぞ

二酸化炭素濃度が上がると植物がより大きくなるから、二酸化炭素を吸ってくれて一件落着

 

「温暖化歓迎」グループ 温暖化が来ることは認めよう、しかし温暖化はいいんじゃないの?

 

耕地が北に広がるから温暖化歓迎

将来の氷河期のために温暖化推奨

温暖化で降水量が増え砂漠が緑に ――>こちらをどうぞ

単純に寒いのよりあったかいのが好きだから

 

「陰謀」グループ 温暖化の研究は陰謀に基づいているため、科学的な議論ができない

 

温暖化は原子力発電推進派の作った陰謀だ

温暖化の研究は政治の介入が強すぎるので当てにならない

 

「政治経済」グループ 温暖化が来ることは認めよう、しかし京都議定書では温暖化を止められない

 

化石燃料の使用を制限したら経済が破綻し、より深刻な環境問題になるかも

いまは経済を発展させ、科学を発展させ、科学技術で温暖化を止めよう

 

 

 

 

 

よくある誤解と、そのメカニズム

 

 

「温暖化は科学的じゃない」という主張を耳にすることがありますが、なぜそうなったのでしょう?

 

 

テレビが言ったこと≠温暖化の理系科学

 

台風が来るたびに「温暖化のせいだな」などと言う人がいます。それを聞いて、「自然にはもともと変動があるから、すべてを温暖化のせいにするのはおかしい」と反応するのは、自然かつ正常です。このような温暖化を誤解して盲信してる人や、それを放送するメディアは、批判されるべきです。問題は、「温暖化を誤解してる素人がいる」という事実から、「温暖化の科学は間違っている」という結論に飛躍してしまうことです。

 

テレビで言ってることがおかしかったからといって、温暖化の科学を疑わないでください。温暖化の科学は、専門書とか学術雑誌の中にあります。テレビやインターネットでは、なかなか得られないものです。このHPでは、専門書を読むほどではないけど温暖化について疑問を持ってる人を対象としています。もちろんこのHPに書いてあることも鵜呑みにしないでください。できるだけソース(学術文献)を載せてあるので、その気になったらそちらを参考にしてください。

 

 

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環境経済・政策学会2006年大会プログラム

 

 

地球温暖化懐疑論の構造分析

Structure analysis of the arguments made by the climate change skeptics

明日香壽川、○吉村純**、増田耕一***、河宮未知生***、小倉正****、江守正多*****、高橋潔*****、野沢徹*****、伊

勢武史******

Jusen ASUKA, Jun YOSHIMURA, Koichi MASUDA, Michio KAWAMIYA, Tadashi OGURA, Seita EMORI, Kiyoshi

TAKAHASHI, Toru NOZAWA, Takeshi ISE

1. 背景と目的

地球温暖化の人為的要因や対策の必要性に関して、既存の科学的知見を無視するかのような議論が国内外で

散見される。地球温暖化問題には、科学的に良く解明されている部分とそうでない部分があり、懐疑的な視

点からの議論は科学的理解を頑健なものとするために重要な役割を果たしうる。しかしながら、既に良く理

解されている事柄までも無視した懐疑的な議論は、問題解決に向けた建設的な研究活動政策検討取り組

みの実践を阻害するおそれがある。本研究では、建設的な議論の推進のために、様々な懐疑的論点を整理す

るとともに、必要なものについては反論を行う。

2. 内容と方法

産業革命以降の人為的な二酸化炭素の大気中への排出を20 世紀後半に顕著な全球的温暖化傾向の主要因と

する考え方(人為的排出二酸化炭素温暖化説)やそれに基づく排出削減への取り組みに対して、懐疑的ある

いは否定的な言説全般を、ここでは「懐疑論」と呼ぶことにする。本研究では、まず様々な懐疑論に対する

反論を、1)地球温暖化問題における「合意」、2)地球温暖化問題のサイエンス、3)地球温暖化問題の優先

順位、に分けて整理した。また、懐疑論を主張する懐疑論者に関して、その意見の拠り所について類型化を

試みた。

3. 主たる解明点結論

3.1. サイエンス分野での懐疑論

懐疑論者の多くは、地球温暖化の自然変動要因として太陽の役割や水蒸気の役割を過大に評価する。また、

「地球温暖化が仮に自然変動ではないとしても、二酸化炭素は主な原因ではない」という下記のような3

の議論を展開する。

議論1:人為起源の二酸化炭素排出量は大気、陸、海の間の炭素循環量に比較すれば小さい。

議論2:温度上昇が原因で二酸化炭素濃度上昇は結果である(二酸化炭素濃度上昇の原因は海水温度上昇の

結果としての海域からの放出であって人為起源ではない)。

議論3:二酸化炭素は地球放射の赤外線をこれ以上吸収しない(飽和状態にある)。

しかし、これらに対しては、以下のような反論がそれぞれ可能であり、どれも単純に誤解あるいは科学的

知見の欠如と言わざるをえない。

東北大学 [email protected]** 気象研究所 [email protected]***地球環境フロンティア研究センター

[email protected][email protected]****NGOスタッフ [email protected]*****国立環境研究所

[email protected][email protected][email protected]******ハーバード大学 [email protected]

 

反論1:大気、陸、海の間の二酸化炭素のやりとり(自然の炭素循環)は、年度末の残高(大気中二酸化炭

濃度)は変化ないものの(プラスマイナスでゼロ)出し入れが激しい貯金口座の、預入・引出のようなも

のである。一方、人為的二酸化炭素排出は、わずかずつであるが年度末残高を増加させる積立貯金になぞら

えることが出来る(産業革命以降現在までの累計で約350Gt)。この累計で350Gt というのは、産業革命以

前の大気中二酸化炭素存在量の約7 割であり、自然界の炭素循環過程での変動では吸収不能な量である。

反論2:海洋中炭素に関する定量的な分析だけでも、減少を示す観測の報告数はゼロで、増加を示す観測の

報告数は、6 つの独立した手法を用いた20 以上の研究文献がある。つまり、観測報告のある近年に関してい

えば、海洋は二酸化炭素の排出源ではなく、吸収源として機能している。

反論3:飽和に近いものの、さらなる吸収は可能である。また、気圧の高い地上付近では飽和していても、

気圧の低い成層圏では未飽和である。

3.2. 懐疑的意見の拠り所の類型化

懐疑論者による懐疑的意見の拠り所は、おおまかに以下のように分類できる。(※印は、その拠り所に対

する筆者らの意見)

1.「地球温暖化起きていない」グループ:温度が低下している地域があるから世界は温暖化していない

※一部の地域の現象のみから、地球全体の傾向を議論している。

2.「温室効果」グループ:20 世紀後半に起きている地球温暖化に対しても、二酸化炭素よりも水蒸気や太陽

放射の影響が大きい

※科学に関する誤解あるいは無理解によるところが大きい。

3.「炭素循環」グループ:二酸化炭素は海域から排出される(人為起源は関係ない)

※これも、科学に関する誤解あるいは無理解によるところが大きい。

4.「悟り」グループ:大量消費大量廃棄は人間の性だから止められない

※自分勝手な議論である。

5. 「地球温暖化歓迎」グループ:温暖化は文明を発展させる

※過去の一部の地域の史実を一般化して全人類の将来に当てはめている。

6. 「すべて陰謀」グループ:すべて原子力推進派あるいはリベラル派の陰謀である

※原子力に関しては状況誤認だと思われる。保守派イコール富裕層とすれば理解できなくもない。

7. 「京都議定書は意味無い」グループ:京都議定書目標を守っても地球温暖化防止には微々たる貢献にしか

ならない

※問題解決に向けた対案のない責任回避である。

8. 「地球温暖化よりも大事なことがある」グループ:貧困やAIDS の方が社会問題としての優先順位が高い

※優先順位付けには社会的な判断を要するものの、地球温暖化も解決に向けた取り組みが緊急に必要な

問題である。この意見も、実質的には対策先延ばしによる責任回避である。

9. 「対策はコストがかかる(収入が減る)」グループ:地球温暖化対策によって経済が停滞する

定量的な議論のように思えるものの、一般に経済に対するマイナス面の影響を過大に評価しており、

温暖化対策が経済に対して持つプラス効果も温暖化被害が持つマイナス効果も無視している場合が多い。